太地のシャチ・「ナミ」の名古屋港水族館への売却について

1985年の捕獲以来、
和歌山県太地町立くじらの博物館に収容されていたシャチのナミが
名古屋港水族館に売却される件につき続報です。

3月12日、太地町議会にて、同町の資産であるシャチのナミを、
繁殖研究の名目で名古屋港水族館に5億円で売却する議案が議決されました。
これに続き、3月26日(金)に開催された
ナミの購入元である名古屋港管理組合議会にて
次のような審議が行われました。

1) 繁殖相手であるオスの手配について
2008年に死亡した「クー」を飼育していた時から、
千葉県のシャチ飼育施設「鴨川シーワールド」と交渉をしており、今後も交渉を続ける。

2) 名古屋港水族館H22年度予算
平成22年度予算では、クーにかかわる5億円の購入金額のうち
代金3億5千万円 + 移送費と保険で6千2百万円
=合計4億1千2百万円を計上。

この他には、水族館の入館料に関する質問や、
シャチ飼育水槽の補修工事に関する質問がありましたが、
いずれもシャチの入手(飼育)に異議を唱えるものではなく、
むしろ購入に積極的な観点からのものでした。

30日(火)に開催される名古屋港管理組合本会議において、予算案などが可決・成立し、ナミの譲渡が正式に決まると予想されます。

環境の激変によりナミの心身に大きなリスクをもたらす恐れがあり、法外な代価ゆえに新たな野生シャチ捕獲のきっかけともなりかねない今回の譲渡に対しては、国外の複数のシャチ研究者から再考を求めるメッセージのほか、長年適応した太地の半自然の飼育環境から引き離されるナミの身を案じる一般からの多数の声が、水族館の管理主体である名古屋港管理組合の管理者にあたる河村名古屋市長に届けられています。

ところが、ナミ購入についての日本テレビの取材に対し、名古屋市長は
「ええと思いますよ。みんなに喜ばれるのも動物の生き方だと思いますよ。大事にせないかんわね。税金だで」
( http://news24.jp/articles/2010/03/26/07156082.html
記事原文ママ)
と発言し、動物の代価としては法外な購入価格、そのために投入される市民の税金、半自然から完全な人工環境への移送がナミの生命にもたらすリスクを不問としました。(※)
都市生活者の享楽のためには金銭の力に明かして動物を入手することを是とし、動物園、水族館の意義を前世紀的な娯楽施設の水準に戻したとも受け取れるこの発言は、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)招聘都市の首長としての資質を問われかねないものです。
また、太地町/名古屋港管理組合の間で交わされるナミ譲渡のプロセスの不透明さ、主目的とされる繁殖計画のずさんさが露であるにもかかわらず
( 太地町議員のかたのブログ
http://park.geocities.yahoo.co.jp/gl/mikumanoseikeijuku/view/20100313


http://park.geocities.yahoo.co.jp/gl/mikumanoseikeijuku/view/20100322

参照 )
一連の出来事に対し、懐疑的なスタンスを示す報道が全く無いことも、異様と言わざるを得ません。

私たちは、ナミの譲渡がもたらす莫大な利益は、
日本沿岸での、やみくもな野生シャチ捕獲が再び計画される布石となると考えています。
図らずも第二の故郷となった太地の海でくつろぐナミの姿に親しみ、ナミから海を奪いたくないと考える方、1997年のシャチ捕獲のような悲劇を二度と起こしたくないと思う方は、
ぜひ名古屋市長 河村たかし氏宛に、ナミ購入を思いとどまるようにメッセージを届けてください。

名古屋市長 河村たかし http://www.city.nagoya.jp/mayor/

市政パブリックコメント:
shimin-no-koe@shiminkeizai.city.nagoya.lg.jp
名古屋市長室秘書係 Fax: 052 972 4105

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(※)河村たかし氏の発言について
「ええと思いますよ。
みんなに喜ばれるのも動物の生き方だと思いますよ。
大事にせないかんわね。税金だで」
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河村氏の発言(報道記事のため、省略されいる場合もあるかもしれないが)について、何が問題なのかを整理してみたい。
ここで、敢えて整理をするのは、河村氏および名古屋議会が問題の本質をよく理解していないで結論を出していると思われるが故である。

まず前提は、河村氏が今年行われる「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」招聘都市の首長という立場であること。
少なくとも、生物多様性条約が何を求めているかを理解することなくして、招聘都市としての資格は語れない。

1) 「みんなに喜ばれるのも動物の生き方だと思いますよ。」
みんな=人間、または水族館来園者ということになるが、そのような生き方を動物自身が選択するはずがないのは当然で、人間(河村氏)の勝手な思い込みである。
また、そのような選択を余儀なくした人間が自然界にどれほど大きなダメージを与え、引いては、人間自身の生活にも影響を与えているということを問うているのが、生物多様性条約の求めるところである。

2) 「大事にせないかんわね。税金だで」
税金の使い道を大事にすることなのか、税金を5億円も費やすのだから(ナミを)大事にしないということなのか不明だが、後者であるとするなら大事にするとはどのようなことなのか。
既に捕獲後25年を経過しているナミを移送することは大事にすることとは思えない。
また、その移送途中にある事態が発生すれば、税金の使い道としても、ナミを大事にすること自体も両方とも成り立たない。
さらに、無事に移送されたとしても、昨年9月に亡くなったクーのように水族館内で不測の事態が起こる可能性は低いとは言えない。
それどころか、シャチという種にとってみれば水族館で飼育されることは、自然の中で生きていくことに比べ自らの生存確率を低めることはもちろん、種を存続するという生物それ自体の権利が奪われるということである。
それが、「動物の生き方」であるのか「大事にする」ことであるのかの判断は、「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」
招聘都市としてよくよく考えていただきたいものである。

最後に3月23日の日経電子掲示版に掲載された、「国際自然保護連合(IUCN)日本委員会」会長と、市民レベルの「生物多様性条約市民ネットワーク」の代表を兼ねる江戸川大学の吉田正人教授のコラムを引用したい。

——具体的には「次の10年」で何をすべきでしょうか。
「きちんとした生物保護地域をつくることです。動物園や植物園で隔離するのではなくて、
自然の中で保護することが重要です。」

http://www.nikkei.co.jp/biod/columns/index.aspx?n=MMWEa3000015032010

クロマグロ問題ではすでに物議を醸している最中だが、
「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」招聘国、招聘都市として日本および名古屋市の挙動が注目されていることを忘れないで欲しい。
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